ロドデノール含有化粧品の危険性と治療法
皆さんは「ロドデノール」という美白成分をご存じでしょうか?カネボウの化粧品被害問題でその名を耳にしたことがある人も多いかもしれません。ここではロドデノールの危険性や副作用について解説していきます。
ロドデノールとは?
ロドデノールとは株式会社カネボウ化粧品が独自開発した物質で、「シミ」や「そばかす」の原因となるメラニンの生成を抑える作用をもつ成分とされています。
メラニンとロドデノールの関係
皮膚の色のもととなるメラニンは、アミノ酸のひとつであるチロシンがチロシナーゼによる酸化反応で合成されます。ロドデノールの化学構造はチロシンとよく似ており、チロシンの代わりにチロシナーゼと酸化反応を起こすためにメラニンが合成されず、結果としてシミやそばかすを防ぐことが期待されました。
しかし、ロドデノールはチロシナーゼと結合するだけではなく、チロシナーゼによって代謝されて「ロドデノール代謝産物」がつくられることがわかったのです。
ロドデノールの副作用
ロドデノール代謝産物はメラニン生成細胞に対して毒性を持っていますが、人間の細胞は自身にとって危険な物質を解毒する能力を備えています。しかし、ロドデノール代謝産物の量がメラニン生成細胞の解毒能力を上回ると、最終的にはメラニン生成細胞が減少または消失してしまうと考えられます。その結果として、白斑(脱色素斑:白く色が抜けた状態)が起こるのです。
白斑について
白斑の症状
ロドデノールが配合された化粧品を使用すると、個人差はありますが約2カ月~3年ほど経過してから化粧品を使用した部位に白斑を発症した事例が報告されました。
最初は化粧品を使用した部位の皮膚の色が薄くなり、進行するとまだらに白斑が発生するのが典型的な症状です。境界がはっきりしている場合もある一方、一見してわからなくてもよく見ると白斑を生じている場合もあります。特に症状が出やすいのが顔や首、手、腕です。
白斑を発症した半数の人は、かゆみや赤みが出たあとに白斑がみられていますが、残りの半数の人はそうした症状がないまま白斑を発症しています。そのまま化粧品の使用を続けて症状が悪化してしまった人もいますし、かゆみや赤みといったかぶれ症状だけで白斑が発症しなかった人もいます。
白斑は回復する?
この問題が発生したのは2013年のことですが、翌年実施された調査によると、医師が経過を把握できた1,341人のうち白斑が消失した、もしくは半分以下になった人を合わせると全体の34%でした。白斑の面積は小さくなったものの半分以上残っている人が38%、変わらない人が25%、逆に増えている人が2%ということです。
さらに1年後の調査では白斑が完全に治癒した、もしくはほとんどなくなったという人を合わせると全体の17%でした。症状が良くなっている人は65%、やや良くなっているもしくは変わらない人が15%、逆に増えている人が2%で、全体の8割に症状の軽快がみられています。部位別には顔が8割、首が7割、手が6割において軽快傾向にあります。
参照元:日本皮膚学会(https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/news/J20150807_1.pdf)
化粧品の使用を中止しても症状がひどくなる?
ロドデノールを含む化粧品の使用を中止しても、白斑の周りの皮膚が黒っぽくなったり、白斑の中に黒っぽい部分ができたりして、まだらの状態が余計に目立ってしまうことがあります。前述の調査でも「一時的に色素が強くなった」「現在も色素が強くなったまま」といった状態がみられます。多くの場合はもとの状態に回復すると考えられます。日光を過度に浴びないよう心がけながら様子をみていきましょう。
白斑の治療
どんな治療を行なうのか
まずはロドデノールを含む化粧品の使用を中止すること、日光を浴びないことが大切です。そのほか、以下のような治療を行なうことになります。
- 外用治療:ステロイド外用剤、ビタミンD3軟膏、タクロリムス軟膏など
- 内服治療:ビタミンC、ビタミンE、トラネキサム酸、抗アレルギー剤など
- 紫外線治療
ただ、化粧品の使用を中止するだけで白斑が改善するケースもあるため、使用中止で様子をみることも治療の一環といえます。実際に、使用中止だけで全体の67%の患者さんに回復傾向がみられています。
化粧品の使用中止以外に治療を行なうかどうかは、皮膚科医師と十分に相談しましょう。
治療の効果は?
化粧品の使用を中止しただけで症状が改善する人もいますので、治療の効果を判断することは難しい部分もあります。
前述の調査では、ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏の効果があると回答した医師はそれぞれ4割、ビタミンD3軟膏は2割でした。紫外線治療は200人以上に実施されていますが、その半数に効果があったとされています。白斑がなかなか改善しない場合は、紫外線治療を試してみてもいいかもしれません。
また、レーザー治療の効果は今のところ不明です。皮膚が黒っぽくなっている部分はメラニン細胞が活発化しているので、レーザー治療の可否については皮膚科医師に相談してください。
遮光は必要?
ロドデノールの作用はチロシナーゼが活性化するほど高くなるので、ロドデノールが皮膚に残っている間は日光を避けるべきです。化粧品の使用を中止したあとも、白斑を起こした皮膚は紫外線を防御できないので、適度な遮光が必要だといえます。
白斑が回復していく過程で一時的に色素が強くなる場合があるので、白斑の部分と黒っぽい部分のまだらを目立たないようにしつつ色素を再生させるためには、サンスクリーン製品も使用したほうがいいでしょう。
サンスクリーン製品の使用が心配な場合は、接触皮膚炎を起こしていないか確認しながら使用します。光パッチテストがおすすめですが、紫外線を浴びる部位に少しだけサンスクリーン製品を塗って、1週間ほど様子をみてかゆみや赤み、ぶつぶつが出ないか観察すると安心です。詳しくは皮膚科医師に相談してください。
白斑を起こした場合のメイク・スキンケア
ほかの美白化粧品の使用もやめるべき?
ごく少数ですが、ほかの美白化粧品でも同様の白斑を起こしたという報告があります。詳しくは皮膚科医師に相談してください。
スキンケア化粧品は使っても大丈夫?
かゆみや赤みなどの症状がある場合は、いったんすべての化粧品の使用を中止して皮膚科医師に相談するべきです。まずは炎症を治す治療が最優先です。
炎症が治まったら、かぶれていないことを確認できた化粧品を少しずつ使用します。いずれにしても、清潔や保湿、紫外線を防ぐといったスキンケアからはじめたいものです。
ファンデーションやクレンジングは使っても大丈夫?
炎症がないのであれば、白斑の治療をしながらでもファンデーションを使用することは可能です。ファンデーションを使って白斑が目立たなくなれば、見た目の不安が和らいで生活の質も高まるかもしれません。
クレンジングは使用量を守り、強くこすらないようにしてメイクを落としましょう。肌に摩擦で負担をかけないよう、優しいタッチを心がけることを忘れずに。